ニュースの概要

クリエイトSDホールディングスは10月19日、セカンドセブンとサードセブンが運営する調剤薬局4店舗を取得すると発表した。子会社のクリエイトエス・ディーが同日付で事業譲渡契約を結び、譲受日は2027年2月1日の予定である。店舗は横浜市、横須賀市、大和市にあり、いずれも医療モール型、つまり複数の診療所が集まる建物や区画に入る形態で運営されている。同社は関東・東海でドラッグストアと調剤薬局を合わせて864店舗を展開する。今回は大型の買収ではなく、既存の商圏を厚くする小さな積み増しである。ただ、何を買い、何を買わなかったかを見ると、同社の調剤戦略がよく分かる。

引用元: クリエイトSD、神奈川県の調剤薬局4店舗を取得(流通ニュース)

分析・見解

買うのは「店」ではなく処方箋の流れである

今回の4店舗は、規模だけ見れば864店舗の0.5%にも満たない。それでも意味があるのは、医療モール型という立地を選んだ点にある。医療モールでは、診療所に通う患者が決まった導線で薬局に入る。処方箋の枚数が読みやすく、集客のための広告や値引きにも頼りにくい。ドラッグストア併設型が物販の来店客に調剤を足す形だとすれば、医療モール型は診療所という「上流」から処方箋を受け取る形である。

同社は自社の商圏に近い神奈川県で、この上流の入り口を事業ごと引き取ることにした。新規に出店すれば、診療所の誘致から調剤報酬の施設基準の取得まで、立ち上げに1年以上かかることも珍しくない。譲受なら、薬剤師と患者と処方元の関係をまとめて引き継げる。時間を買う取引である。

調剤報酬の改定が小規模薬局を追い込む

こうした譲渡が増える背景には、調剤報酬の構造がある。薬局の収入は薬価差益から技術料へ比重が移り、地域支援体制加算などの施設基準を満たすには、在庫品目数、夜間・休日対応、研修を受けた薬剤師の配置が要る。店舗数の少ない事業者ほど、この負担が重い。

加えて、薬価は毎年のように引き下げられる。仕入れ交渉力が弱い小規模事業者は、同じ処方箋を扱っても利益が残りにくい。調剤薬局の事業者数は多く、上位10社でも市場の2割に届かない。小さな事業者が大手に事業を渡す流れは、今後も続くとみるのが自然である。

人手不足の時代に、薬剤師を確保する手段としての買収

もう一つの動機は薬剤師の確保である。薬剤師の求人倍率は都市部で高止まりしており、紹介会社に払う手数料は1人あたり年収の2〜3割に達する。店舗ごと譲り受ければ、そこで働く薬剤師と事務スタッフも引き継げる。採用費を払わずに人員を確保できる面は見落とされやすい。

同業のウエルシアやツルハも、調剤併設店の拡大と調剤専門事業者の買収を並行して進めている。大手の調剤売上比率が上がるほど、薬剤師の取り合いも激しくなる。買収は、その競争から一歩先に出る手段になる。

医療モール型のリスクも織り込む必要がある

一方で、医療モール型には弱点がある。処方元の診療所が閉院したり、医師が代替わりして方針が変わったりすれば、処方箋は一気に減る。店舗の価値は、建物ではなく診療所との関係に宿る。譲渡契約から譲受日まで3.5か月ほど空けているのは、診療所側への説明や、患者への案内、人員の移行に時間を割くためだろう。買収後の数か月で処方箋枚数がどう動くかが、この取引の成否を分ける。

ビジネスへの影響

薬局経営者は「売る」選択肢を数字で比べておく

小規模な調剤薬局の経営者にとって、今回の事例は出口戦略を考える材料になる。判断の軸は3つある。第一に、施設基準の維持コストである。薬剤師の増員、在庫の拡充、夜間対応を自力で続けられるかを試算する。第二に、処方元の依存度である。上位1〜2か所の診療所で処方箋の6割以上を占めるなら、その関係の継続性が譲渡価格を左右する。第三に、後継者の有無である。

売却を急ぐ必要はないが、業績が良いうちに相談したほうが条件は有利になる。複数の買い手から意見を聞くことで、相場観もつかめる。

診療所やモール運営側が確認したいこと

医療モールに入居する診療所や、モールを運営する不動産側にも影響がある。薬局の運営会社が変われば、患者対応の方針、在庫の考え方、情報共有の方法が変わる。診療所は、後発医薬品の在庫、時間外の対応、疑義照会の連絡体制を、譲受日の前に確認しておきたい。賃貸借契約の承継条件も要点になる。

就業中の薬剤師にとっての変化

事業譲渡では、雇用が自動で引き継がれるわけではなく、個別の同意が要る。給与体系、勤務地、研修制度が変わる可能性があるため、説明会で聞く項目を事前に整理しておくとよい。大手の傘下に入れば、教育や在宅業務の機会が広がる一方、異動の範囲も広がる。自分の働き方に何が合うかを考える機会にしてほしい。

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