ニュースの概要
上場している主要な薬局・ドラッグストアチェーン22社の2026年度第1四半期決算を集計すると、18社で調剤事業の売上高が前年同期を上回った。比率にして81.8%にあたる。薬局を併設した店舗の出店や、処方箋を受け付ける件数の拡大に力を入れてきた企業で伸びが目立つ。ただし、売上の増加がそのまま利益の改善にはつながっていない。調剤報酬の改定の影響に加え、人件費や店舗運営費の上昇が収益を押し下げている。調剤売上高の順位では、クスリのアオキがトーカイを上回った。
引用元: 主要薬局チェーンの8割超で調剤売上高が増加、アオキがトーカイを上回る(PHARMACY NEWSBREAK)
分析・見解
8割超の増収は、市場の追い風より出店競争の結果である
22社中18社が増収という数字だけを見ると、市場全体が好調なように映る。だが、処方箋の総枚数は人口減少で大きく伸びる局面にない。つまり増収の中身は、市場の拡大ではなく、他の薬局から処方箋を奪う動きと、新しい店を増やす動きの合算である。
特に調剤併設型の店舗は、食品や日用品で集客し、そのまま処方箋の来店につなげられる。単独の調剤薬局には真似しにくい強みであり、成長企業ほど出店を急ぐ理由がここにある。
アオキがトーカイを上回った意味は、規模の逆転ではなく型の違い
今回の順位入れ替えは、調剤をどう位置づけてきたかの違いを映している。アオキは物販と調剤を同じ店舗に収め、郊外の幹線道路沿いに大型店を重ねてきた。一方のトーカイのように、調剤を専業に近い形で運営してきた側は、立地を選んで出店する分、店数の伸びに限りがある。
過去にも似た構図はあった。コンビニが弁当を強化して専門店の客を奪ったときと同じで、集客の入口を持つ側が、専門領域に入り込む。調剤でも同じことが起きている。
売上が増えても利益が残りにくい構造
利益の面では逆風が強い。調剤報酬は改定のたびに、薬の取り扱いや体制に応じた加算の条件が細かく変わる。条件を満たすには薬剤師の配置や研修が必要になり、その負担が先に来る。
さらに、薬剤師の採用競争で人件費が上がっている。店を増やすほど薬剤師が必要になるため、出店で売上を伸ばすほどコストも膨らむ。売上高の伸びと営業利益の伸びが一致しないのは、この構造のためである。
次の競争軸は、店数ではなく1店あたりの処方箋の質
出店余地は次第に狭まる。今後は、1店舗あたりの処方箋枚数に加え、在宅医療への対応や、かかりつけ薬剤師としての継続的な関わりといった、報酬の評価を受けやすい業務をどれだけ持てるかが問われる。
また、調剤業務の機械化や、服薬指導の一部をオンラインで行う工夫も、薬剤師1人あたりの生産性を左右する。店を増やす競争から、1店の中身を磨く競争へ移る局面にある。
ビジネスへの影響
薬局経営者は出店数より1店の採算を見直す時期にある
新規出店は売上を押し上げるが、薬剤師の採用費と教育費を先に吸い込む。出店計画を立てる際は、開店から黒字化までの期間と、薬剤師1人あたりの処方箋枚数を最初に置いて試算したい。既存店でも、処方箋枚数が伸びない店舗は、在宅対応や併設する物販の見直しで改善の余地がある。
報酬改定への備えも欠かせない。加算の取得を前提に収益計画を組むと、条件変更のたびに利益がぶれる。基本部分で黒字を確保し、加算は上乗せとして扱う設計が安全である。
薬剤師の採用側と、取引先のメーカー・卸にも波及する
薬剤師の採用競争は今後も続く。給与だけで勝負すると体力勝負になるため、調剤機器の導入で負担を減らす、勤務の柔軟性を高めるといった働きやすさの整備が、結果的に採用費を抑える。
医薬品メーカーや卸の側は、成長する大手チェーンへの依存が強まる点に注意が要る。調剤売上の伸びが特定企業に集まるほど、価格交渉の力関係は変わる。取引先の分散と、中堅チェーンとの関係維持を、いまから意識しておきたい。
投資家・提携先が見るべき指標
売上高の増加率だけでなく、調剤部門の利益率、薬剤師1人あたりの売上、既存店の処方箋枚数の推移を並べて見ると、成長の質が分かる。増収増益か、増収減益かの区別が、次の1年の評価を分ける。
