ニュースの概要

日経メディカルは、薬局各社の決算を並べて見ると、これまでの薬局経営の前提が崩れつつあると報じた。国が決める調剤報酬と薬価に収益の大半を預け、処方箋の枚数を積み上げて成長する。この型が、人件費の上昇、薬価の引き下げ、報酬の見直しという三方向の圧力で弱っている。記事は、各社の数字に現れた利益率の低下や出店戦略の変化を手がかりに、従来型の経営が転換点にあることを示している。本稿では、その背景と、現場の経営者が取るべき行動を独自に整理する。

引用元: 各社決算で実感する薬局のビジネスモデルの終焉(日経メディカル)

分析・見解

公定価格に頼る収益は、構造的に伸びにくくなった

薬局の売上の大半は、調剤報酬と薬の販売差益である。どちらも国が価格を決める。民間企業としては珍しく、値上げで人件費の上昇を吸収できない。

薬価は毎年のように引き下げられ、薬を仕入れて売る差益は細っている。一方で薬剤師や事務員の賃金は上がり続けている。売上は横ばいでも、利益だけが削られる状態である。

「処方箋を集めて規模を拡大する」型が限界を迎えた理由

これまでの勝ちパターンは、病院の門前に店を構え、処方箋の枚数を増やすことだった。店を増やせば、薬の共同仕入れで条件が良くなり、本部の管理費も薄まる。

しかし、報酬の設計は近年、大手チェーンに厳しく、かかりつけ機能や服薬指導の中身を重く見る方向へ動いている。店を増やすだけでは加算が取れず、むしろ人員配置の義務だけが重くなる。規模の利益が、規模の負担に変わりつつある。

小売の世界では、スーパーが値下げ競争と人手不足で薄利に陥った例がある。公定価格に守られてきた薬局も、同じ道筋に入ったと見る方が自然である。

決算の差は「薬以外の稼ぎ方」に表れる

決算を比べると、調剤だけの会社と、化粧品・日用品・食品などの物販を持つ会社とで、利益の安定度が分かれる。調剤は景気に左右されない代わりに伸びしろが小さい。物販は価格を自社で決められるが、在庫と値引きの管理が要る。両方を持つ会社は、片方が弱った時にもう片方で支えられる。

ここに独自の視点がある。重要なのは物販比率そのものではなく、調剤で来店した患者が、物販でも買い物をする「動線」を作れているかどうかである。同じ客から二度稼ぐ設計ができている店ほど、一人あたりの収益が高い。

在宅とデータが、次の収益の柱になる

高齢化で、通院が難しい人が増えている。自宅や施設へ薬を届け、飲み残しや副作用を確認する在宅対応は、報酬が手厚く、競合も少ない。ただし、薬剤師の移動時間と夜間対応の負担が大きく、仕組みなしには広げにくい。

もう一つはデータである。服薬履歴や在庫を電子化すれば、薬の無駄な廃棄を減らし、医師への報告も早くなる。これは加算の取得にも直結する。手間を減らす投資が、そのまま収益に返ってくる分野である。

ビジネスへの影響

まず自社の収益を「調剤・物販・在宅」に分けて見る

経営者が最初にやるべきは、店舗ごとの利益を三つに分けて数えることである。調剤で稼いでいるのか、物販が支えているのか、在宅が育っているのか。ここが曖昧なままでは、どこに人と金を回すべきか決められない。

特に、薬価引き下げの影響を受ける調剤の差益は、来期の見通しを厳しめに置いた方がよい。赤字店を「門前だから」と抱え続けるのか、移転や統合を決めるのか。その判断基準を数字で持っておくことが出発点になる。

人への投資は「増員」より「仕事の置き換え」で考える

薬剤師は採用が難しく、賃金も上がっている。人を増やして解決する発想は、もう通用しにくい。薬の準備や在庫確認、入力作業を機械や事務スタッフに任せ、薬剤師は服薬指導と在宅訪問に集中させる。

自動分包機や電子薬歴の導入は初期費用がかかる。それでも、一人あたりの対応件数が増え、加算の取得漏れが減れば、数年で回収できる見込みが立つ。まず一店舗で試し、効果を数字で確かめてから広げるのが現実的である。

地域での役割を決め、少数の強みに絞る

全方位で戦う余力は、中小の薬局にはない。在宅に強い、特定の診療科に詳しい、健康相談の場として選ばれる、といった一つの強みを決め、地域の医師や介護事業者に伝えることが大切である。

大手と同じ土俵で規模を競うより、顔の見える関係で紹介を受ける方が、広告費もかからず安定する。決算が示す厳しさは、小さな薬局にとって、役割を明確にする機会でもある。

関連記事